この投稿では「双極性障害【第2版】 ──双極症I型・II型への対処と治療 (ちくま新書)」(加藤忠史)を紹介します。
以前より、Twitterのフォロワーさんから勧められていた本です。
機会があったら読みたいとずっと思っていたのですが、なかなか手につかず、昨日見てみたらKindleセール中だったのでついに購入して読みました!
結論:双極性障害のことがすごくよく分かる本なので、すごくおすすめです!
以下で詳しく紹介していきます!
どういう本か
一言でいうと、双極性障害のことが、1冊でまるごと理解できる本です。
双極性障害を解説する本は、世の中に様々ありますが、本書は平易な言葉でわかりやすく書かれており、また短時間で読めるので、読むことに対するストレスが有りませんでした。
全体を読み流しながら、自分にとって特に必要と思われる部分だけ重点的に読んでも内容は頭に入ってくると思います。
特に、私が読んで役に立ったと感じるのは以下の3点です。
以下で簡単に内容を紹介します。
双極性障害(双極症)の名称の変遷の経緯
双極性障害(双極症)は、もとは「躁うつ病」と呼ばれていましたが、「躁うつ病」だけでなく、「うつ病」も含めて使う場合もあったため、現場で少々混乱があったそうです。
言葉は似ていても経緯や処方する薬は全く違うのですが、現場では同じような治療が行われていたり、1回毎の躁状態やうつ状態が、断片的に「躁病」「うつ病」と診断されることもあったそうです。
結果として、長期的な展望を持って治療することが行われず、患者にとって不利益になるだけでなく、病気の研究をしようとしても、医師によって診断が違うので研究にならないという自体も生み出されていました。
ここで登場したのがアメリカ精神医学学会によるDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)です。どのような症状が何日続いたら何病と診断するという基準です。
これによって、これまで「躁病」や「うつ病」と断片的に診断されてきた症状を「躁病エピソード」「抑うつエピソード」と呼び、これらを伴う一つの病気として「双極性障害(この場合正確には双極Ⅰ型障害)」と呼ぶことになったんだそうです。
ところで、これまでDSM-5では「バイポーラー・ディスオーダー」という英語を、「双極性障害」と翻訳していました。これは、DSM-Ⅲを翻訳するとき、ディスオーダーを「障害」と訳すことにしたからです。
ところがこの「障害」という日本語は、もう一つ別の英語の翻訳としても使われていました。それはディスアビリティーです。
ディスアビリティーとは、何らかの能力(アビリティー)が失われた状態のことを示し、いわゆるハンディキャップのことだそうです。(身体障がい、知的障害がその代表)
「バイポーラー・ディスオーダー」が「双極性障害」と訳された結果、双極性障害をはじめとする精神障害はみな、「能力が失われた状態」であり、治ることはない、といった誤解を招く危険が出てきたのです。
確かに、精神疾患の中にも、そうした側面を持つ疾患もありますが、治療によってすっかり治癒し、何ら社会機能の障害を残さない人も多くいる中、社会が「この人は●●障害」と考えてしまったらそれはスティグマ(烙印)ということになりかねない。
そこで、DSM-5の翻訳時に、日本精神神経学会はディスオーダーを「症」と訳すことに決めたのだそうです。
これによって社会の偏見が少しでも減ることを期待しているのだそうです。
なるほど~、そういう経緯だったわけか!と勉強になりました。
「双極性障害」と訳すと「ディスオーダー」と「ディスアビリティー」の違いが引っかかっていた、というわけですね。
お医者様側の意図は伝わりました。
でも、正直私も病歴10年以上になり、まだまだ寛解には程遠いことを考えると、「お前は精神障害者だ」という偏見を受けることよりも、「症」と訳してしまうことで、「取るに足りない病気」「軽い疾患」と思われる方が辛いかな、という気もします。
皆さんはどう思われますか?
そもそもどういう疾患か、Ⅰ型とⅡ型の違い
双極性障害(双極症)にはⅠ型とⅡ型があります。
双極Ⅰ型障害というのは、入院が必要になるほど激しく、放っておいたら本人の人生が台無しになってしまうほど大変な躁状態、そしてうつ状態を繰り返すものを呼びます。
一方、双極Ⅱ型障害というのは、いつもと違って明らかに「ハイ」になっているけれど、入院を要するほどではない「軽躁状態」と、うつ状態を繰り返すものを言います。
つまり、Ⅰ型とⅡ型は、躁的な状態の程度の違いのみによって診断されます。
一度でも激しい躁状態があれば、その後、うつ状態がなくても、双極Ⅰ型障害と診断されるそうです。
重症(Ⅰ型と思われる患者)の家族には重症の患者が、入院しなかった人(Ⅱ型と思われる人)の家族には軽症の患者が多かったことなどから、この2つは独立した疾患だと考えられるようになっったのだそうです。
更に詳しい「どういう人がⅠ型かⅡ型か」の詳細は割愛するので、興味があれば本書を買ってみてください。
なお、現在アメリカでは双極性障害の過剰診断が問題になっているそうです。
背景として、双極性障害の新薬を販売している製薬会社が間接的に一役買っている可能性があるのだとか。
患者としては怖い限りです。。
治療に使われる薬とその効果についての解説
私は現在、双極性障害治療薬としては、ラモトリギン、オランザピン、クエチアピン、カルバマゼピン(+アカシジア対策としてアキネトン、ピレチア)を飲んでいます。
本書では、双極性障害の第一選択薬は「炭酸リチウム」である、と述べられています。
リチウムは躁にも鬱にも予防にも効く万能薬で、唯一自殺予防にも有効性のある薬なんだとか。
私も以前リチウム飲んでましたが、当時は多剤過ぎて、整理したときに処方されなくなりました。
前の医者にリチウムやめてラモトリギンとカルバマゼピンを残した意図を聞かなかったけど、聞いてみたかったな。
その他の薬も「どれが躁に対する効果があり、鬱に対する効果があり、予防に対する効果があるか」というのを一覧表にするなどして、細かく解説されており、この部分の内容が自分にとっては一番勉強になりました。
いままで処方された薬を漠然と飲んでいたのですが、それぞれの薬が「躁」「鬱」「予防」のどれを目的として使われているのかがわかったので、今後病状が悪化したときなど、自分からも医師に薬の相談や提案ができるような気がします!
まとめ
いかがでしたか?
今は私は病識がまあまああるので、(気づかないときはありますが)自分自身でチェックしたり夫から注意してもらうようにしてなるべく問題を起こさないよう努力していますが(もちろん全部はうまくいかない)、双極性障害(双極症)は、病識がなかったり、治したいという意識がないと、躁状態のときなどはトラブルが起きまくるだろうから怖い病気ですね。
でも、この本を手に取るなどして、病気を理解し、前に進もうとしていれば、なんとかうまくやっていけるようになるんじゃないかな、と(自分自身に対しても)私は割と楽観視しています。
(いま薬が合っているからうつ時の落ち込みが減ってこう思えているだけなのかもしれませんが)
一方、Q&Aでも触れられていますが
双極性障害は一生、完治しないものなのでしょうか?
あるいは、いずれ、完治するところまで医学は進もうとしているのか、教えてください
という質問に対し、筆者は
これは私が今までに、最も多く受けたご質問です。
何をもって「完治」と考えていらっしゃるのでしょうか?
(中略)
高血圧の方で「完治しない病にかかった」といって日々思い悩んでおられる方はあまり多くないように思います。
(中略)
今、薬が合っていて、飲んでいる限りは再発せず、副作用も大したことはない、という方の場合は、完治していない、などと思い悩むよりも、病気のことは忘れて人生を楽しんでいただいたほうが良いのではないでしょうか。
と答えています。
「そりゃ、再発していないならお前は別に良いだろ」の場合は置いておいて、双極性障害の診断が最初におりた頃は私も
一生完治しない病気にかかった。私なんてどうせ不幸な人間だ
などとふてくされていた時期もありますが、今は
私の人生は、病気や診断名が決めるのではなく、私の努力や工夫、考え方が決めるのだ
と思っています。
もちろん病気は嫌だし気分の波に翻弄されることも多くて疲れるしむかつくけれど、「努力や工夫、考え方が決める」のは、障がい者であろうが、健常者であろうが中身はさして変わらないのではないかとも思うようになりました。
病気を乗り越えて、幸せな未来を掴みたいですね!
一緒に頑張りましょう!
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