この投稿では傷病手当金を貰える期間と満了後のアクション、退職後の”継続給付”を実体験を交えてお伝えします。
傷病手当金を解説するウェブサイトはたくさんありますが、傷病手当金の制度そのものだけでなく、傷病手当金受給の体験談を知りたい需要があるのではないかと考えたため、当記事を執筆しました。
なお、傷病手当金に関する連載の過去記事はこちらです。
傷病手当金とは(わかりやすく解説)再掲
※第1回でも説明した内容の再掲です。
そもそも「傷病手当金」という言葉を初めて聞いた方もいると思います。
私も実際に怪我をして、会社から教えてもらうまで全く知りませんでした。
傷病手当金とは、病気や怪我のために健康保険に加入している本人(被保険者)が会社を休み、給料が支払われない場合に、全国健康保険協会、健康保険組合(保険者)などから、療養中の生活保障として給付される手当金を指します。
病気休業中の本人(被保険者)とその家族の生活を保証する制度です
傷病手当金は最大何ヶ月もらえるか?
療養で働けない期間の生活を保証する傷病手当金ですが、最大何ヶ月もらうことができるのでしょうか?
答え:傷病手当金の支給開始から「通算」して1年6か月の期間受給可能です。
実は令和4年1月以前までは、
傷病手当金の支給開始から「起算」して1年6ヶ月以内
でした。
「起算」と「通算」ってどう違う?
「起算」・・・1度傷病手当金を受給すると、不支給期間があってもトータルで1年6ヶ月までしか受給できない仕組み
「通算」・・・支給期間のみを通算して1年6ヶ月間傷病手当金が支払われるようになった
以下の表がわかりやすいです
つまり、療養期間まるまる1年6ヶ月が傷病手当金の最大受給期間となりました!
【体験談】私の上司(うつ病)の場合
サラリーパーソンをしてた頃の私の上司の一人が、ある時から、
3日間無断欠勤 ⇒ 2週間出勤 ⇒1ヶ月欠勤・・・
などと休みがちになりました。
たまたま通っている精神科が私と同じで、うつ状態であると分かったのですが、当時自分の得意とする部署から総務課へ異動が決まってからは一度も出勤できなくなりました。
半年が過ぎ、10ヶ月が過ぎた頃、支配人に
●●さんはまだ体調悪いんでしょうか?
と訪ねた所、
状況の報告がないからわからない。
そろそろけじめを付けてもらわないといけない。
という答えが返ってきました。
これを聞いて、
傷病手当金は1年6ヶ月まで貰える権利はあるものの、管理職とコミュニケーションしないまま休職期間だけ伸びてしまうと、復帰しづらくなるのだと言うことがわかりました。
つまり、
といえます。
逆に
と私には感じられました。
今回私の上司(うつ状態)の場合は、
仕事のストレスで体調を崩しがちになった
↓
部署が変わってよりストレスが大きくなってしまった
↓
会社とも復職に向けたコミュニケーションが取れなくなってしまった
という状態でした。
結局満了ぎりぎりまで傷病手当金を受給して退職し、同業他社への転職を果たしました。
環境を変え、自分の希望する部署に就けたことでまた安定して出勤できるようになったようです。
当時上司は、復職どころか、支配人と話すのが怖くなってしまったようだったので、転職してまた働けるようになったと聞いて良かったなあと思いました。
退職後も傷病手当金をもらい続けられる「継続給付」とは
今回の私の上司のように、休職期間が長期化して管理職の目が厳しくなるなど復職が難しくなった場合には無理せずしっかり権利を使い切って転職するのも一手です。
傷病手当金は、条件さえ満たせば、退職後も通算1年6ヶ月までは「継続給付」が受けられるから
です。ただし、元上司のように1年6ヶ月まるまる休職して傷病手当金を満了まで受給し、退職することが許されればそれでも良いかもしれませんが、復職の見込みが立たない状況で、それより先に辞職を勧告される場合もあるかと思います。
それでは、退職後も傷病手当金を貰う「継続給付」を受けるためにはどうしたら良いでしょうか。
条件が2つあります。
条件1)健康保険加入期間が1年以上あること
まず1つ目の条件は、健康保険加入期間が1年以上あることです。(この場合「入社から退職までの期間」と置き換えられる場合がほとんどです)
逆に1年未満であった場合には退職後の傷病手当金の継続給付を受けることができません。
例えば、入社直後から病気によって傷病手当金を受け取り、なかなか復職の見込みが立たない場合、1年間までは会社を休職させてもらい、1年で病状が安定すれば元の職場に復帰、復帰の見込みが立たなければ退職、というプランであれば、そのまま退職することになった場合にも「継続給付」が受けられます。
また、傷病手当金受給期間を含めて在職日数が1年間を超えていれば、そのまま退職しても「継続給付」が受けられます。
ただし、会社の規則等によって、1年未満で退職せざるをえない場合もあるかと思います。詳細は会社に問い合わせるか、会社の就業規則等をご確認ください。
条件2)退職日に出勤しないこと
もう一つの条件は、退職日に出勤しないことです。
傷病手当金の「継続給付」の要件に「退職時に傷病手当金の支給を受けている」というものがあり、退職日に出勤すると「継続給付」を受けられなくなるからです。
退職する際、「退職日に出勤するのがマナーでは?」と思う方もいるでしょうが、「継続給付」の要件として定められているものなので、業務の引き継ぎや、挨拶は退職日よりも前に行うほうが良いでしょう。
【満了後のアクション①】傷病手当金⇒失業手当受給に移行する
会社を退職したら雇用保険の失業手当(基本手当)の受給を検討する方も多いと思いますが、
傷病手当金と失業手当は同時受給することができません
これは、失業手当は求職時(働くため)の補助的な金銭給付という側面を持つのに対し、傷病手当金は「今は療養期間なので仕事は休みましょう」という側面をもつ給付であるからです。
じゃあ、退職後は傷病手当金の「継続給付」か「失業手当」のどちらかを選ぶしか無いの?
いいえ違います。
退職後、ハローワークにて手続きを行えば、失業手当の受給期間を延長しておくことができるのです。
通常、失業手当を受給するためには退職後29日以内に申請を行う必要がありますが、病気や怪我で30日以上働けない場合には、ハローワークにて手続きを行うことで、失業手当受給開始を3年(受給期間を4年)繰り越すことができます。
【満了後のアクション②】就労移行支援でブランクを取り戻す
傷病手当金を満了まで受け取ったということは、1年6ヶ月のブランクが生じたことになります。
また、満了まで傷病手当金を受給していなくても、休職(退職)明けで「本当にまた働けるのか不安」という場合もあるでしょう。
そのような場合には「就労移行支援」を活用するのがおすすめです。
「就労移行支援」とは障害を持つ方が働くリハビリ、トレーニングをしながら、次の就職先を見つけるサポートが受けられる事業所です。
就労移行支援事業所は全国各地にあり、自分の障害理解を深めるプログラムや、一般的なビジネススキルを身につけるプログラム、職場インターンや、ITなど専門スキルに特化するなど、事業所によって様々なプログラムを盛り込んでいます。
【満了後のアクション③】転職エージェントに登録、利用する
これは傷病がある程度落ち着いた方向けですが、いよいよ就活を再開しようと考えたら、障がい者特化転職エージェントを利用するのがおすすめです。
精神疾患者の転職活動では「やみくもに応募したけれど、どの会社もマッチしない・・・」という挫折を味わうこともしばしばあります。
その点、障がい者特化の転職エージェントを利用すれば、自分の障害や特性にマッチした求人を探し、提案してくれたり、履歴書や面接のサポート、就労後のアフターケアまで「無料」で受けられるため、大変効率がよく心強いです。
働く意欲が湧いてきたら、まずは思い切って転職エージェントサイトへ登録したり、転職エージェントの面談に出向いてみましょう。
▶内定まででなく、入社後のサポートも充実!障害者の就・転職ならアットジーピー【atGP】
まとめ
今回例示した私の元上司のように、職場のストレス等で休職したものの、なかなか職場復帰できない、そのせいで会社からの風当たりも強くなってしまう・・・というケースは意外と多いのではないかと思います。
通い慣れた職場で、配慮を受けつつ復帰できれば良いのですが、会社の状況により必ずしも復帰しやすい環境が整っているとは限りません。
その場合は、まずは療養、その後スパッと転職するのも一手です。
傷病手当金は最大1年6ヶ月受給が可能ですし、
①1年以上の健康保険加入
②退職日に出勤しない
という条件をクリアすれば、退職後も「継続給付」を受けられます。
また、傷病手当金は、雇用保険の失業手当と同時受給はできないものの、両者を組み合わせて連続で受給することで、心身の負担を減らしながら最終的に転職を成功させることも可能です。
その際、就労移行支援事業所や、障がい者特化の転職エージェントも活用すると良いでしょう。
傷病手当金を含め、精神疾患を患った際に支えとなる制度は多数あります。
最終的に自分らしく負担の少ない生活を送るため、制度を理解し、活用していきましょう。