私が双極性障害などの精神疾患を患って生活する上で一番苦しいと感じてきたのは「お金」の問題です。
精神科へは、2~3週間に1回通い、当時、3割負担の「通院費1,500円、薬代5,000円程度」で医療費は月平均1万円を超えていました。
摂食障害(過食症)も併発しており、深夜何度もコンビニを徘徊しては、1回につき1,000円以上の食料を買って食べあさってしまうのが止められず、貯金をどんどん切り崩し、預金口座の残金が1,000円未満になってしまったこともあります。
20代なかば頃、あまりにお金が苦しいので、いつも通っている薬局に
薬代が高すぎてお金がとても苦しいんですが、どうにかならないでしょうか?
と訪ねたことがありますが、その時の薬剤師は
ジェネリックが出ていないので高くなってしまうのは仕方ないですね・・・
としか教えてくれませんでした。
絶望感が凄まじかったです。
が、それから数年後。
知り合いが私と同じ双極性障害を患っており、何気ない話の中で
自分は自立支援医療があるから助かっている。躁鬱くんも申請すべきでは?
と教えてくれたんですね。
え?なにそれ?
自立支援医療(精神通院医療)とは、精神疾患の通院費が1割負担になる制度です。
精神科やメンタルクリニックで双極性障害や統合失調症、うつ病などの精神疾患のために通院しているほとんどの方が申請できる制度です。
国の公費負担医療制度ですが、医者や薬剤師から先に教えてもらえるとは限りません。
なので精神科通院中でまだこの制度を利用していない方は、すぐにでも主治医に相談してみるのがおすすめです。
以下で自立支援医療(精神通院医療)について解説します。
自立支援医療とは
自立支援医療とは、心身の障害の治療のため、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。
自立支援医療には以下の3種類があります。
私のような双極性障害を含む精神疾患の自己負担額を軽減できる制度が、自立支援医療のうち「精神通院医療」にあたります。
本投稿では「精神通院医療」について解説します。
自立支援医療(精神通院医療)の対象者
厚生労働省が挙げている自立支援医療(精神通院医療)の対象者は、以下のとおりです。
(1)病状性を含む器質性精神障害(F0)
(2)精神作用物質使用による精神及び行動の障害(F1)
(3)統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害(F2)
(4)気分障害(F3)
(5)てんかん(G40)
(6)神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害(F4)
(7)生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群(F5)
(8)成人の人格及び行動の障害(F6)
(9)精神遅滞(F7)
(10)心理的発達の障害(F8)
(11)小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F9)
※(1)~(5)は高額治療継続者(いわゆる「重度かつ継続」)の対象疾患
※https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/seishin.html
なんだかちょっと難しい言葉が並んでいますが、要するに「統合失調症」や「うつ病」、「双極性障害」や「てんかん」といった精神疾患が対象となります。
また、私が以前診断されていた「転換性障害(身体表現性障害)」や「境界性パーソナリティ障害(私の場合は「の疑い」)」も自立支援医療(精神通院医療)の対象であることが見て取れますね。
つまり、継続して通院が必要な幅広い精神疾患について、自立支援医療(精神通院医療)は対象となります。
自立支援医療(精神通院医療)の患者負担は「1割」
通常、私達が病院にかかったり、薬を処方される際の医療費の窓口支払額は小学生以上~70歳未満で3割負担です。
これに対し、自立支援医療(精神通院医療)は、精神疾患にかかる「診察費」「薬代」といった医療費の支払額を「1割負担」、かつ、「所得に応じた上限額」で済ませられます。
所得区分 | 世帯所得 | 月額負担上限 | 「重度かつ継続」 の月額負担上限 |
---|---|---|---|
生活保護 | 生活保護世帯 | 0円 | 0円 |
低所得1 | 市町村民税非課税であり、 本人の所得が80万円以下 | 2,500円 | 2,500円 |
低所得2 | 市町村民税が非課税であり、 本人の所得が80万円より上 | 5,000円 | 5,000円 |
中間所得1 | 市町村民税の納税額が 33,000円未満 (年収約290~400万円未満) | 「高額療養費制度」の 限度額が上限 | 5,000円 |
中間所得2 | 市町村税の納税額が 33,000円~235,000円未満 (年収約400~833万円未満) | 「高額療養費制度」の 限度額が上限 | 10,000円 |
一定所得 以上 | 市町村税の納税額が 23万5,000円以上 (年収約833万円以上) | 対象外 | 20,000円 |
例えば私は現在住民税非課税世帯(低所得1)なので、通院+薬代の月額上限は2,500円で済ませられています
(とっても助かっています(T_T))
なお、「重度かつ継続」の範囲とは、厚生労働省HPで以下のように定義されています。
○疾病、症状等から対象となる者
[ 精神通院 ]
① 統合失調症、躁うつ病・うつ病、てんかん、認知症等の脳機能障害、薬物関連障害(依存症等)の者
② 精神医療に一定以上の経験を有する医師が判断した者
○疾病等に関わらず、高額な費用負担が継続することから対象となる者
[ 更 生 ・ 育 成 ・精神 通院 ]
医療保険の多数回該当の者
自分が「重度かつ継続」に該当しているか不安であれば、主治医に尋ねてみましょう。
自立支援医療(精神通院医療)の申請方法
自立支援医療(精神通院医療)は、以下の流れで申請します。
- STEP1医療機関を受診し、診断書と意見書を受け取る
指定自立支援医療機関※を受診し、診断書と、該当する場合は「重度かつ継続」に関する意見書を医師に書いてもらいます。
- STEP2在住する市区町村の「福祉課」窓口で申請する提出物
・自立支援医療費(精神通院)支給認定申請書
・自立支援医療診断書(精神通院)(申請日から3か月以内に作成されたもの)
・医療保険の加入関係を示す書類(受診者及び受診者と同一の「世帯」に属する方の名前が記載されている医療保険被保険者証等の写し)
・「世帯」の所得状況等が確認できる書類(市区町村民税課税・非課税証明書等)躁鬱くんこのほか、身分証明書、マイナンバーカード、健康保険証も持参するようにしましょう。
- STEP3精神保健福祉センターから支給認定されれば、市区町村から受給者証が送られる
精神保健福祉センターの判定結果、支給認定されると
・受給者証
・自己負担上限額管理表が送られてきます。
- STEP4受給者証を持って指定自立支援医療機関を受診する
制度の適用を受けるには、毎回の受診時に「受給者証」と「自己負担上限額管理票」を指定自立支援医療機関※に提出します。
※指定自立支援医療機関:お住まいの都道府県が指定した医療機関を、「病院:1か所、薬局:2か所まで」選んで利用する必要があります。多くの医療機関が該当しますが、必ずしも現在利用している医療機関が該当するとは限らないため、市区町村に確認してください。
自立支援医療の申込みのハードルはそれほど高くありません。
もしかしたら初めて診断書をお願いするのには勇気がいるかも知れませんが、お金の負担感のほうが圧倒的に高いので、まずは主治医に相談してみましょう!
どうしても体調が悪い
自分でコミュニケーション取れない
という方は、ご家族の方に協力してもらいましょう。
代理で申請も可能です。
自立支援医療を獲得して治療を進めましょう。
自立支援医療(精神通院医療)のQ&A
ここからは、自立支援医療(精神通院医療)で私も疑問だったよくあるQ&Aをまとめます。
自立支援医療は6ヶ月経たないと申請できませんか?
A)⇒自立支援医療(精神通院医療)には最低通院期間は定められていません。
「通院による精神医療を継続的に要する者」(厚労省)であればいつからでも申請が可能なので、該当するとわかったら早めに申し込むことで、治療の負担、お金の心配が少なくなります。
自立支援医療はいつから1割負担になりますか?
A)⇒自立支援医療(精神通院医療)の適用を受けるには「受給者証」と「自己負担上限管理表」を毎回の受診時に提出する必要がありますが、「受給者証」の発行には2~3ヶ月ほどかかる場合があります。
届くまでの間、手続きをした際の自立支援医療費(精神通院)支給認定申請書の「本人控」を医療機関・薬局に提示してください。
私の場合、自立支援医療の申込申請後最初の診察時に「本人控え」を見せることで自立支援医療が適用されているとみなして、あらかじめ窓口支払を1割負担にしてもらうことができました。
ただし全ての医療機関でこの対応をしてもらえる訳ではないようなので、ご自身の通う医療機関に問い合わせるようにしてください。
申請が通れば、過去の医療費も戻ってきますか?
A)⇒自立支援医療申請前の医療費は戻ってきません。
私は自立支援医療(精神通院医療)の制度を知るまで8年かかりました。
その間にかかった医療費は1円も返ってきません。
お金が苦しくて辛かった・・・
私がそうでしたが、医師や薬剤師から教えてもらえるとも限らないので、精神疾患で通院を続けていてこの制度を知らなかった方は是非早めに申し込んで、お金の苦労を減らしてください。
申請が通れば、どの医療機関でも1割負担になりますか?
A)⇒自立支援医療が適用されるのは、都道府県が定めた指定自立支援医療機関のうち、ご自身が選択した医療機関のみとなります。
病院は1施設のみ、薬局は2施設のみ選択が可能です。
この制度を利用するときには、利用したい医療機関を申請書に記載し申請する必要があります。 病院・診療所及び訪問看護事業所は原則として1ヶ所、薬局は2ヶ所まで利用できます。
茨城県公式HP:https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/seiho/seishin/seishin/homepage.file/04tsuuin/04tsuuin/jiritsushien.html
この記事執筆にあたって詳しく調べるまで「病院も薬局も登録は1か所のみ」かと思ってましたが、薬局は2か所いけるみたいです!
自立支援医療申込みのための診断書の費用はいくら位ですか?
A)⇒医療機関によって異なります。
おおよそ2,000円~1万円程度のようです。
私の場合、前の病院は5,000円、今の病院は2,000円(ありがたい)です。
病院によってぜんぜん違う!
なお、今住んでいる自治体の福祉課の担当の方に教わったのですが、精神障害者保健福祉手帳と自立支援医療はまとめて申請・更新ができます。
まとめることで、診断書が1枚で済むため、「2,000円~1万円」の診断書代を節約することができるんです。
途中からでもまとめられるので、詳しくは市区町村の福祉課で相談してみてください。
(当サイトでも後日、詳細執筆予定)
自立支援医療を使えば、精神疾患の入院費も1割負担になりますか?
A)⇒なりません。
自立支援医療が適用されるのは、病院又は診療所に入院しないで行われる医療(外来、外来での投薬、デイ・ケア、訪問看護等が含まれます)が対象です。
自立支援医療を使うと、就職時や就業中の会社にバレますか?
A)⇒自立支援医療を使っていることは就職時や就業中の会社に知られることはありません。
自立支援医療の申請・利用において、会社に提出する資料は一切ありませんし、会社に作成してもらう必要のある書類も無いため、「精神疾患で通院中であることがバレたくない」と思っている方でも安心して制度を利用することができます。
自立支援医療に有効期限はありますか?
A)⇒自立支援医療「受給者証」の有効期限は1年間です。
「自立支援医療を1年しか利用できない」という意味ではなく、毎年更新を行うことで継続して制度を利用することができます。
有効期限のおおよそ3ヶ月前に住んでいる自治体からお知らせがあり、更新手続きが可能です。
更新は新規申込時と同じく、住んでいる市区町村自治体の福祉課にて行います。
・自立支援医療(精神通院)支給認定申請書
・自立支援医療受給者証
・診断書
が必要ですが、診断書は2年に1回でOK(治療方針に変更がない場合)です。
まとめ:自立支援医療に該当するとわかったら早めの申請がおすすめ!
いかがでしたか?
精神疾患は一度罹ると、風邪のように2,3日で回復・・・という訳にはなかなかいかず、数ヶ月や数年スパンで治療しなければならない厄介な病気です。
複数の治療薬を服用しなければならないなど、医療費もかさみがちですが、自立支援医療を使えば、治療費の自己負担は「1割」かつ「所得に応じた上限額」で済ませられます。
お金の負担が減るのは精神衛生上とても大きい!
私自身、自立支援医療(精神通院医療)の制度を知るまで、体調も悪いし、生活も苦しいしで、未来に全く希望を持てませんでしたが、申請が通ってからは気持ちがグンと楽になりました。(8年かかったけど・・・)
なので、自立支援医療を知らなかった!まだ使っていない!という精神科通院中の方はぜひ早めに利用を検討してみてください。
なお、このほか、
・精神障害者保健福祉手帳
・障害基礎年金
の取得も自分にとっては大きなプラスだったので、また別の機会に執筆します。
それでは!
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